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最終更新日 2003/09/19

中南米グルメ

<2003・1・14掲載>

 今いるペルー・クスコは3360mと高所にあるため、水の沸点が87.1℃しかなく、米を炊くにもゆで卵をつくるにも加減が難しい。邦人在住者は圧力釜を使ったりしているようだが、旅行者である私はチリで買ってきた飯盒を使っている。世界最高所にある首都、ボリビアのラ・パスは標高3650m。ボリビア人はいったん米を炒めてから炊いていた。こんなところではアルデンテなど考えたこともないらしく、店で出てくるパスタはいつも茹ですぎてふにゃふにゃだ。 トマト・じゃがいも・とうもろこし・とうがらしなど、中南米原産の野菜や果物は多い。また、アルゼンチンは肉、チリは魚介類が安くてうまい。中南米は素材に恵まれているにもかかわらず、料理法はいたってシンプルでバリエーションは少ない。だから、食べ物の記憶は一国につきだいたい一品とかなり乏しい。

 メキシコはなんといってもタコス。日本のメキシコ料理屋で食べるとやたらと高いが、現地では庶民のファーストフードである。特にタコスの本場、グアダラハラのタコスはうまかった。トマトやパクチーのみじん切りを好きなだけのっけて食べる。牛の他に豚や鶏を使ったもの、舌や脳みそなどいろんな部位のもの、煮豆も一緒にくるんだもの(これはタコスというよりもブリトー。タコス同様トルティージャにくるんだ料理である)などもあり、単純ではあるけれど具によって味はさまざまだ。

 中米はとにかく鶏肉とトルティージャ。放し飼いの地鶏を炭火で焼くか、油で揚げる。ぷりぷりしてジューシーでうまい。中米にはエルサルバドル発のポジョ・カンペーロというケンタッキーフライドチキンのようなチェーン店があるほどだ。トルティージャはメキシコでは小麦粉の割合が多く、器械で薄くのばすのでクレープのようだが、中米では圧倒的にとうもろこしを多く用い、石灰水をつけた手でまとめるので石灰くさいうえに分厚くてぼそぼそする。食べ慣れるまでは、細かくちぎってスープにぶちこんでやっと食べられるような代物である。しかし、エルサルバドルにはトルティージャの中にフリホーレスやチーズを入れたププサという料理があり、これはうまい。(フリホーレスとは小豆に塩を加えてあんことぜんざいの間くらいの水加減に煮たもので中米では一般的な料理である。中米にいたときはよくこれに砂糖をかけて食べた)トルティージャを米でつくったププサもあり、これは餅のようでさらにおいしい。

 さて、このトルティージャ。国によって違う料理を指す。まず、旧宗主国スペインではじゃがいもをいっぱい加えた、おなじみのスペインオムレツのことである。そして、中米では小麦粉やとうもろこしを薄くのばしたものだが、これが南米のパラグアイでは野菜のかき揚げになる。同様にタコスやタマーレスも同じ呼び名でも国によって異なる料理だ。

 中米で食べた、最もうまかったものはスリランカカレー。もちろん一般的な料理ではない。ベリーズのような移民の多い国ではさまざまな国の料理屋がある。グアテマラとの国境に近いサンイグナシオでスリランカ人がつくる本格的なスリランカカレーは、グアテマラのぼそぼそトルティージャとベリーズ赤飯(ベリーズの定食。ココナッツミルクで炊いた豆ごはんで赤飯のように見える。)にいいかげんあきあきしていたこともあって、胃にしみわたるうまさだった。スリランカ料理はかなり稀だが、まずどの国にでもあるのは中華だろう。もちろん中国人がやっている店はまともなものが出てくるが、現地人がつくっているところはすごいものが出てくる。グアテマラではなにを頼んでもなぜか食パンがてんこもりやってくる。エクアドルあたりでは揚げワンタンにジャムがついているらしい。メキシコ人や中国人がやっている日本料理屋も、揚げた寿司やら生トマト入り鍋焼きうどんやら、ちょっとずれたものが出てくる。それぞれの国を離れて、中南米で独自の進化を遂げつつあるようだ。

 アルゼンチンの肉は塩胡椒して焼いただけ。チリの魚介類は煮込むかフライ。自炊すれば安くあがるというのもあるけれど、それ以上に他の料理法で食べたいという動機の方が強い。たとえば中南米では牛の舌や尻尾などはほとんど食べない。捨てるような値段で売っている舌の先の柔らかい部分をタン塩にし、根元の硬い部分を煮込みにする。チリでは鱧がスープのだしをとるくらいしか使い道のないくず魚だ。漁港で6匹1000ペソ(2ドル弱)で買ってきた鱧を骨切りをして湯引きにしてポン酢で食べたり、雑炊にしたりと鱧三昧を楽しんだ。特に夏のチリは魚だけでなく、果物も安くて豊富だ。冬が旬のウニ以外はすべてのものがおいしく、夏のチリは食べ物に関しては天国だ。

 日本の食材は日系人の多い国、特にブラジル・パラグアイ・アルゼンチンでは安くで買える。現地でつくっているので日本よりも安い。日本人コロニーに行けば、普通にあんぱんやら大福やらようかんが売られている。ボリビアのコロニア・サンファンでは長崎ちゃんぽん、パラグアイのコロニア・イグアスではラーメンをおいしくいただいた。たとえ食材が手に入らない国でも、レモン汁を酢の代わりに、蜂蜜をみりんの代わりにしたりとなんとか工夫してそれらしいものをつくって食べるが、麺を打ったりスープを長時間煮込んだりしなければならないものは、さすがになかなか食べられないのでたいへんありがたかった。

 グアテマラではマヤ料理と称したアルマジロ・イグアナ・食用ネズミ・七面鳥・鹿・テペスクインテ(手乗り猪のような小動物)の盛り合わせを食べた。ここ、インカの国ペルーでは、リャマやアルパカなどのラクダ科の動物を食べる。そして、一番のごちそうはクイという食用モルモットである。下戸なので飲めないのだが、ボリビア・ペルーではとうもろこしを唾で醗酵を促進させた酒、チチャがよく飲まれる。あんまり細かいことを気にすると中南米は楽しめない。うまければなんでもよいのだ。どんなものでもしっかり食べられる強靭な胃袋が旅の必須アイテムである。

2003・1・4 ペルー・クスコ(ペンション八幡にて執筆)

訂正 チリでくず魚として売られているのはどうも鱧ではなく、穴子であるらしい。そのどうも穴子らしき魚はチリではanguila(鰻)と呼ばれており、長細くてにょろにゅるした魚はとりあえずanguilaであるようだ。チリで鰻は一度も見かけなかった。

 

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